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・ミサイル発射直前、平壤入りメディアの能天気・

 北朝鮮が国際社会の警告を無視してミサイル七発を発射した前日の七月四日、共同通信、読売新聞、朝日新聞、NHK、TBS、フジ、テレビ東京の七社の記者団が平壤入りしていた。事前にミサイル発射の情報をつかみ、そのための北朝鮮入りであれば大いに評価されるべきであるが、残念ながらそうではない。
 七社の訪朝について、朝日は「本社を含む日本のマスコミ七社の北朝鮮取材は、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の提案を受けて実現した」(七月六日付)と明かしている。北朝鮮が用意した取材の目玉は拉致被害者の横田めぐみさんの夫とされる金英男氏のインタビューだ。七社の記者はミサイル発射当日、自国の安全と世界の平和を脅かす弾道ミサイル発射という渦中に身を置きながら、当日の平壤市内の様子や平壤市内に居住する北朝鮮国民の表情など現地の様子を伝える記事を送っていない。またミサイルの脅威にさらされた当事国のメディアとして北朝鮮側に抗議した様子もない。わずかに、北朝鮮外務省の日本担当員との会見の模様を伝え、「ミサイル発射はわが国の自主権にかかわる問題だ」とするの北朝鮮の身勝手なコメントを紹介している。
 北朝鮮が七社を受け入れたのは「拉致問題の幕引きをしたい」との思惑があるのは明らかだ。金英男氏のインタビュー、横田めぐみさんが生活していたとする「招待所」や「入院」していたとする病院を「公開」したのもその一環である。母や姉との再会し、韓国メディア対象の記者会見をした金氏が直ぐ後の日本メディアとの会見である。二つの記者会見が日韓両国と被害者家族を離反させる作戦の重要な舞台であることは明白である。
 ところが、七社の記者団は北朝鮮が用意した取材対象を受け入れ、北朝鮮の身勝手な言い分をニュースとして日本に送った。その意味で狡猾な北朝鮮の情報戦略の片棒を担いだに等しく、拉致被害者の救出という日本の国益を損なう行為なのではないか。
 日本のメディアには最初に平壤支局を開設すればメディア史に残るという「功名心」があるといわれる。週刊新潮(七月十三日号)によれば、北朝鮮は支局開設をちらつかせて日本メディアを巧みに利用してきたと報じている。しかし、そもそも独裁国家の北朝鮮で「自由な取材」が可能なのか。かつて北朝鮮取材に参加した友人によれば、北朝鮮では記者に対し、流暢な日本語を話す北朝鮮当局者がマンツーマンで付き添い、監視され、とても自由に取材などできなかったという。「平壤支局」開設自体を否定するものではないが、国益を損ねてまで支局を設置する意味があるのか極めて疑問だ。
 メディアは取材にあたっても相手の政治的意図や思惑も含め吟味・精査する必要がある。七社の北朝鮮取材は、はたしてその検証が十分であったのか。ミサイル発射直前の平壤入りというタイミングの悪さも合わせ、首を傾げざるを得ないのである。

 (平成18年7月11日記)

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