・国旗・国歌をめぐるメディアの座標軸・
平成16年春、新聞メディアで「国旗日の丸・国家君が代」論争が展開された。この中で国旗・国歌に対する読売新聞、産経新聞と朝日新聞、毎日新聞のそれぞれの考え方の違い、言論機関としての姿勢と方針を垣間見ることができた。国旗・国歌をめぐるメディアの座標軸が明らかになったことは有意義である。
論争の発端は通達に反し、卒業式で「国歌君が代」の斉唱の際、起立しなかった教職員百七十六人を東京都教育委員会が戒告処分したことに朝日が批判したことに始まる。
朝日社説(三月三十一日)は「起立せずで処分とは」と異議を唱え、「そうまでして国旗を掲げ国歌を歌わせようとするのは、いきすぎを通り越して、なんとも悲しい」と批判したのだ。これより先、朝日は都立高校などの卒業式をめぐって国旗・国歌の「強制」に反対する社説(三月十八日)を書いている。 読売は社説(三月三十一日)で「甲子園では普通のことなのに」と、朝日を批判している。都教委の処分を批判した朝日に対し、産経のコラム産経抄(四月一日)は「強く異議を申し立てる」として、「そうまでして国旗・国歌を貶(おとし)めようとする論調は、なんとも悲しい」と朝日を批判した。産経は主張(四月三日)でも「国旗国歌法が成立した平成十一年、朝日は法制化に反対した」「朝日はいつから、日の丸を掲げ、君が代を歌うことを認めるようになったのか」と朝日に迫った。
これに対し朝日社説(四月四日)は「産経社説にお答えする」として、国旗日の丸・国歌君が代を「掲げない自由」「歌わない自由」を認めるべきだと主張した。
産経抄(四月五日)は「国際的マナーや常識をわきまえさせるべき生徒や学童の前で、“公人”である教育者が個人的な信条や権利を振りかざしていいものか」と再批判した。
毎日は社説(四月六日)で「都教委の姿勢は本末転倒」と朝日に同調した。
学習指導要領は、入学式や卒業式には「国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と定めている。政府は「国旗・国歌の教育指導は教職員の責務であり、従わない場合は、地方公務員法に基づき懲戒処分を行うことができる」としてきた。
都教委の処分は学習指導要領と政府の方針を踏襲したもので当然の措置である。都教委は通達に反した場合は懲戒処分の対象になることを伝えていた。それに従わなかったのは「確信犯」であり、教職員としては不適格と言わざる得ない。
産経の厳しい批判の結果、朝日社説(四月十三日)は「『卒業式で日の丸を掲げるな』『君が代を歌うな』と朝日が言ったことはない」と、釈明せざるを得ない状況に追い込まれた。言論機関である新聞が対立しているテーマで論争することは論点を深め、国民が共通の認識を持つ上でも意義が大きい。
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